外壁塗装とアスベスト調査の関係とは
近年、外壁塗装を行う前に「アスベスト調査」が義務化されたことをご存じでしょうか。アスベスト(石綿)はかつて外壁材など建築資材に広く使用されていた素材ですが、健康被害が社会問題となり、現在では使用・製造・輸入が全面禁止されています。
しかし、過去に建築された住宅にはアスベストを含む外壁材が使われている可能性があるため、外壁塗装などの工事を行う前には事前調査が必要になります。この記事では、外壁塗装とアスベスト調査の基本知識から、対象となる建物、調査の流れ、注意点まで詳しく解説します。
アスベストとは?なぜ問題になっているのか
アスベストとは、天然に産出される鉱物繊維で、耐熱性・耐久性・断熱性に優れていることから、外壁材・屋根材・断熱材・内装材などに広く使用されてきました。しかし、その繊維を吸い込むことで肺がんや中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こすことが分かり、2006年以降、日本では原則としてアスベストの使用が全面禁止となりました。
外壁塗装工事がアスベスト拡散の原因に?
アスベストは固形の状態で封じ込められていれば大きな問題はありませんが、外壁塗装の際にケレン(削り)作業や補修工事などで外壁材を破損・破砕すると、空気中に飛散する恐れがあります。工事関係者だけでなく周囲の住民や家族にも影響を及ぼすため、事前の調査が非常に重要です。
アスベスト調査が義務化された背景と対象建物
アスベスト調査は近年、法改正により外壁塗装やリフォーム工事でも義務化されています。では、どのような建物や工事が対象となるのでしょうか。
2022年4月から「事前調査」の報告が義務化
2022年4月に施行された改正法(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)により、一定規模以上のリフォーム・解体工事を行う場合は、事前にアスベスト調査を実施し、結果を自治体へ報告する義務が課されるようになりました。報告対象となるのは、以下のような条件に該当する場合です。
* 解体工事(床面積80㎡以上)
* 改修工事(請負金額100万円以上)
* アスベスト含有が疑われる建材を使用している建物
外壁塗装だけの場合でも、壁材の交換や削り作業を伴う改修をする際には、調査義務の対象になることがあります。
1980年代以前に建てられた建物は特に注意
アスベストが最も多く使われた時期は、1960〜1980年代といわれています。この期間に建てられた住宅では、外壁材(窯業系サイディングやスレートなど)にアスベストが含まれている可能性が高いため、築年数が古い建物ほど調査の必要性が高まります。
外壁塗装前のアスベスト調査の流れ
アスベスト調査は、外壁塗装業者が行うこともあれば、専門の調査機関に依頼することもあります。調査にはいくつかの方法があり、建物の状態や調査範囲に応じて選択されます。
調査の主なステップ
1. 事前確認(書類調査)
建築図面や使用資材の資料などからアスベストの使用有無を確認します。
2. 目視調査
専門家が現地で外壁材の種類や状態を確認します。建材に刻印や品番がある場合は、その情報から含有の有無を判別できることもあります。
3. 試料採取・分析
目視だけで判断できない場合は、建材の一部を採取し、分析機関で成分を確認します。顕微鏡分析やX線回折装置などが使われることが一般的です。
4. 調査結果の報告書作成・提出
調査結果をもとに、必要であれば自治体へ報告し、工事前に対策を講じます。
調査にはどれくらいの費用がかかる?
アスベスト調査の費用は、建物の規模や調査範囲によって異なりますが、目安として3万円~10万円程度が一般的です。特に試料採取・分析が必要になると費用は上がります。外壁塗装の見積もりを取る際に、調査費用が含まれているか確認しておくと安心です。
アスベスト含有が判明した場合の対応方法
もしアスベストが含まれていた場合、どのような対応を取ればよいのでしょうか。実際には「封じ込め」や「囲い込み」、「除去」など、建物の状態に応じた対策が求められます。
封じ込め・囲い込みによる対応が一般的
外壁にアスベストが含まれているからといって、すぐに撤去が必要なわけではありません。飛散しないよう表面をコーティングする「封じ込め」や、新たな外壁材で覆う「囲い込み」といった方法が一般的です。
これらの方法なら、アスベストを触らずに塗装や補修ができるため、安全かつコストを抑えながら施工を進めることができます。
除去作業が必要な場合の注意点
もし除去が必要な場合は、専門資格を持った作業員が厳重な防護措置のもとで作業を行う必要があります。作業後はアスベストを適切に処分する必要もあり、一般的な外壁塗装よりも費用や期間が大幅にかかることがあります。
まとめ:外壁塗装を安全に進めるために、アスベスト調査は必須
外壁塗装を行う際、アスベスト調査は「安全な工事」を行ううえで欠かせないステップです。特に築年数が古い建物では、外壁材にアスベストが使われている可能性があり、調査を怠ると工事中の健康被害や法令違反のリスクが生じます。
正しい知識をもとに調査を実施し、必要に応じて対策を講じることで、安心して外壁塗装を進めることができます。工事を依頼する前に、業者がアスベスト調査に対応しているか確認し、安全で適切な施工を心がけましょう。